円高続くが、介入警戒感で攻めきれず

金融市場では先週に続き不安定要因が目白押しである。週初から米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が米国の財政赤字および債務の増加を根拠に長期格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に修正する一方で、ギリシャ国債を保証するコストが上昇し、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)スプレッドは過去最高をつけた。

 

ギリシャ政府が、国際通貨基金(IMF)と欧州連合(EU)に対し、同国の全債務の期限延長を求めたとの報が材料視された(この後、ギリシャ政府はこの報道を否定)。米ドルやユーロ売りの話だが、結果的にリスク回避姿勢を強めるとの見方から円買い圧力を強めることになる。超低金利が継続している円を売っていた投資家が、リスクを回避するために円の買い戻しをするのである。足元では、円高要因が慢性的にある。

 

中国のGDP成長率が10−12月期の前年比9.8%から1−3月期は9.7%に僅かな減速にとどまったが、3月のCPIインフレ率は市場予想を上回る前年比5.4%で2008年以来の高い伸びとなり、1−2月の4.9%から上昇した。中国の温家宝首相は、インフレ抑制の姿勢を強める発言をしており、中国人民銀行はインフレ抑制を目的に今年4回目となる預金準備率の再引き上げを行った(昨年は6回)。中国人民銀行の周小川総裁も、金融引き締めが「しばらくの間」続くと発言しており、インフレ抑制のための追加利上げが実施される公算は大きい。

 

市場からの資金吸収策は上海株式市場など中国株の値下がりを招き、投資家のリスク許容度を縮小させる可能性がある。また、最近の米経済指標の不調や投票権を持つFOMCメンバーの発言内容から連邦準備制度理事会(FRB)の出口戦略への過剰な期待が後退し始めており、米金利の低下基調で日米の金利差縮小を背景に米ドル売り圧力が強まると思われる。

 

特に米経済指標では市場予想通り3月のCPIが2カ月連続で前月比0.5%上昇し、食品・エネルギー価格が引き続き全体の上昇に寄与したが、それ以外の物価の伸びはかなり抑えられており、今のところインフレ懸念が拡大する可能性は低い。今週は米主要企業の決算発表が相次ぎ、日本の東日本大震災の影響を受けて製造業を中心に先行きの業績に慎重な見方が示されれば、世界的に株安傾向が進みリスク回避の円買いを誘発する可能性もある。

 

最後にドル円やユーロ円などのロングポジションの積み上がりが、徐々に買い戻されつつある。欧米諸国が今週末から実質のイースター休暇入りのため、短期ポジションの手仕舞いによる円の買戻しが進むとみている。その後のゴールデン・ウィークのドル円相場でも、過去10回中7回下落しており、円高に振れやすい傾向にある。

 

しかし先日の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の声明では、為替レートの無秩序な動きや継続したファンダメンタルズからの乖離を回避するための協調の強化で合意されており、今後も過度の円急騰には、必要なら協調介入もあり得るとの内容であった(投機的円買いの継続は難しいと思われる)。

 

また欧米の主要国とは違い、日銀は金融緩和継続という円安材料もある。既に4月27日の米FOMC声明では、6月末の量的緩和を予定通り終了することを示唆するとみられる一方で、翌28日の日銀の金融政策決定では、追加緩和策がとられるとの見通しがある。ドル円相場では、一時的な円高の可能性があり上値は重いものの、下値では協調介入警戒感が根強く攻め辛い。目先ドル円相場では、1ドル=80円〜84円での推移とみている。

 

また、欧州通貨が冴えない動きになると見ている。ユーロでは欧州中央銀行(ECB)の次回利上げが6−7月までないと予想される中、格付け会社ムーディーズのアイルランドの格下げなどソブリン危機は残されている。また英ポンドでも英国の消費が伸び悩み、5月の利上げ期待が徐々に後退している。欧州通貨の一段の下落にも注意が必要となろう。

 

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